Italian Culinary Institute for Foreigners
ICIF 外国人のためのイタリア料理研修機関
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マスターコース研修日記
2006.8.24
生乳からフレッシュチーズを作る工程を説明するリカルド氏。
イタリア全土から集められた試食用チーズ。
 到着翌日、午前中は校舎となるお城の施設の説明や授業内容についてのオリエンテーションが行われる。待望のリチェッタも配布。なんとその数は153。さらに特別講師によるレシピなども配られることになるとか。この2ヶ月の内容の濃さを改めて想像する。
 午後よりいよいよ授業開始。まずは一番簡単で理解しやすいチーズの講義から始まる。講師はとても穏やかなリカルド氏。彼のてきぱきとしたデモンストレーションに一同、釘付け。特にアオスタ渓谷州のフォンティーナチーズを使った“フォンデュータ”が印象的だった。経験を頼りに目で、そして手の感触で出来上がり状態を厳しくチェックする彼の真剣な眼差し――仕上がったフォンドゥータは口当たり柔らかく、チーズの個性を感じられる逸品。授業中ということを忘れて何度も試食してしまう。
 最後には、いよいよチーズの試食。ずらりと並べられたチーズは計13種類。中には正体不明とでも言えるほどに溶けているものや、茶色の物体(ワインを作る際に出たブドウの搾りかす)が全面に付着した珍しいものも。そして教室には完璧に食べごろをむかえたチーズの独特の香りが充満…。おいしい!と本場のチーズにうっとりする人もいれば、一口食べて難しそうな顔をする人もちらほら。授業初日からイタリアと日本の食文化の大きな違いを目の当たりに。

2006.8.29
コスティリオーレ・ダスティ村の真ん中に聳え立つ城。ここで料理研修が行われる。
実習中は戦場(!?)と化す、アウラ・プラクティカ。一人ひとつのミニキッチンが与えられ、ここで課題をこなす。
 日本で8月といえば、まだまだ30度を越す日々が続くものだが、ここコスティリオーレ・ダスティは既に秋の気配。朝晩はめっきり冷えこみ、長袖がないと生活できない。今日は久々にカラっと秋晴れ。村のメイン・ストリートからはきれいに城が見える。
 この城は築城1000余年。1995年秋からの大改修を終えて、1997年3月からICIFが1階を使うことになった。外見はとてもロマンティックだが、内部には近代的なファシリティを備えている。アウラ・プラクティカ(実習教室)、アウラ・マーニャ(デモンストレーション用教室)、エノテカ、パティスッチェリア(パンやドルチェのデモンストレーション用教室)、ダイニング、クッチーナ(ランチ、ディナー用のキッチン)があり、私たち生徒は忙しくあちらの部屋からこちらの部屋へと、忙しく移動する日々を送る。

2006.9.4
ワインのプロ中のプロ、ジャンニさん。エレガントの身のこなしに、いつも惚れ惚れ。
エノテカはかつて穀物倉庫に使われていたという歴史的な空間。
 ワインと料理の組み合わせを理解することを最終の目的として、今日からなんと! 約50時間連続でワインの授業が始まる。講師であるジャンカルロ・レルカーラ氏、通称ジャンニさんはこの道30年で、89年にはイタリアのソムリエのチャンピオンに輝いた実績もあるという大ベテラン。今日からの授業は、朝9時半から夕刻5時までお城の地下にあるエノテカで行われる。ここはワイン学を学ぶ際に必要な照明つきの机や数種のグラスなどの最新の設備が揃っている場所。ひんやりとした空気を肌で感じ、これからより一層真剣に授業に望まなければ、と気持ちを新たにする。
 今日は試飲まではたどり着かず、ワインの原材料となるブドウの構成と醸造までのプロセスの理論が中心。座学ゆえ睡魔に襲われる人も続出するかと思いきや、ジャンニさんのスピーディな授業にウトウトする暇もなく、頭にめいいっぱいワインの知識を詰め込むことに。この授業が終わった頃には、ワインについてかなりと詳しくなれることを実感する。

2006.9.8
厳しい眼差しでトレイの正しい持ち方を知る。ジャンニさんが持つと軽そうに見えるが、実際に料理やカトラリーが載れば、その重さは5キロほどにもなる。
 一流シェフは料理だけでなく、サービスへの知識も深めてお客様と接する必要があるという理念の下で、丸々一日、ジャンニさんによるサービスの授業。エレガンスを感じさせる立ち居振る舞いを徹底的に叩き込まれる。
 午前中は、まず皿の持ち方の指導。皿の淵に指紋をつけない持ち方、皿を持ってキビキビと姿勢よく歩く訓練まで行う。19人、それぞれが3枚ずつ皿を持って一列に並び、ダイニングルームをひたすらグルグルと歩くと、時折ジャンニさんの檄が飛ぶ。
 午後には、どのようにサービスをするのか、その方法の実践を行う。お客様の迷惑にならない料理の出し方、そして片付け方。考えることがあまりに多くて頭はパンク状態・・・。しかしながら、明日から実際に、ランチとディナーでは私たちがサービスをしなくてはならない。実践を重ねれば、いつの日か美しいサービスができるようになるのだろうか。そんな日を夢見て、今は練習あるのみ。

2006.9.14
かわいらしいパスタたち。
揚げなすとペンネのオーブン焼きPasta ‘ncasciata’,
色々野菜とサルシッチャのペンネPenne alle verdure e salsiccia
 今日はお待ちかねのパスタの授業の日。午前は4品の詰め物入りフレッシュパスタ講習、午後は3品の乾燥パスタを使った実習だ。まずTortellini, Tortelloni, Agnolotti, Ravioliの4種類の詰め物をリカルド先生が手際よく作ってゆく。それからそれぞれ詰め物に合わせた粉や卵の配合でパスタ生地を練る。成型は生徒達が手分けして行った。童心に返ってひたすらこねこね、ぺたぺた。でき上がったパスタたちの愛らしいこと。茹でられてる姿もなぜか愛おしい。皆思わず写真をパシャリと撮ってしまう。
 お待ちかねのあっさじゃーれ(味見)。口の中でじわっと広がる美味しさと乾燥パスタじゃ得られない独特の歯触りに感動。あー幸せだ、美味しいもの食べてる時皆緊張感もほぐれて優しい顔してるね。
 午後は実習。今まで何度も実習してきたが、いつも緊張感が漂う。限られた時間の中、一人一人に与えられた調理場で責任持って料理を仕上げ、先生にコメントをもらう緊張感とプレッシャー、そして生徒達の間でひそかに起こる競争心と助け合い。切磋琢磨し、助け合うことで友情を深め、共に成長できるからこそ実習が終わるとなんともいえない爽快感がある。またICIFはプロ養成学校だけあって味つけはもちろんのこと見た目も美しい料理が学べる機会が得られたことは非常に有り難く感じる毎日。明日も終日パスタ実習の日。今度はどんなパスタに出会えるか?!

2006.9.15
イタリア語の授業の様子。
いつもニコニコ、優しいロザンナ先生。
 週に1、2回のペースで早朝にイタリア語の授業が行われる。ロザンナ先生は英語も話せるので分かりやすく説明してくれる。ICIFでは料理学校だけあって日常会話以外に料理専門用語なども習う。
  今日はリチェッタ(レシピ)の読み方の日。イタリア語のレシピが読めるようになれば日本に帰っても勉強できるようになる。みなさん居眠りはダメですよ。

2006.9.16
かたつむりよ、こんにちは。
ぶどう畑で農作業。ここからの眺めは最高。
 コスティリオーレの町に2ケ月ぶりの雨。秋の風が吹き、ワインの収穫の季節がやってくる。夏の朝と夜の寒暖の差が美味しいワインをつくるとのこと。今年は美味しくなりそうだ。
 雨がやんだ午後は野沢さん宅のぶどう畑で農作業+部屋の大掃除のお手伝い。その写真を撮ろうするフォトグラファーのしげみさん。しげみさんはモンテフェラーノのピエモンテ主催の写真展に出す写真を撮るため、1週間私たちに同行している。
 野沢さんの家はぶどう畑に囲まれた高台にあり、ここから見る眺めが実に素敵なのだ。私はこの夏の景色しか知らないけど、野沢さんはここから四季折々の景色を眺めていられるなんて本当に羨ましいかぎり。そして絵に描いたような可愛いお家に広い庭(掃除と手入れが大変そうというか大変だったよ(笑))まである。休日は庭にテーブルを置いて仲間達と夢心地で美味しいワインを飲む。それから野沢さんのイタリアに対する豊富な知識と情熱に圧倒されながらもパワーをもらい、それぞれの生い立ちやイタリア料理への熱い思いを語っていると夢に近づく気がして嬉しくなる。みんなそれぞれどんな夢を追いかけているのか?ICIFに来てから夢に近づいた気がしないか?

2006.9.18
真剣な眼差しで試飲。視覚、嗅覚、味覚をフルで働かせて、料理との相性を判断する。
これが料理とワインの組み合わせを視覚的に捕らえるためのスケーダー。これと自分の味覚を照らし合わせてワインが最適なものかどうかを考察する。
 この2週間、連続で行われてきたワイン学の授業が今日で最終日を迎える。はじめはチンプンカンプンだったワインだったが、ジャンニさんの指導の下、今回の目的であったワインと料理の組み合わせまで理解ができるようになった。
 まずはワインの試飲を正しい方法で行う。そしてサンプルの料理を食べ、その香り、味を記憶させ、最後にこの二つの相性を独自の表にまとめ視覚的に捕らえるという作業を行う。はじめは、一日平均7種類のワインの試飲に加え4品の料理の試食という気も遠くなる授業内容に集中力も切れがちで、ただただジャンニさんの行うことを真似ているだけで精一杯であったが、授業を重ねるごとに慣れ、ようやく自分自身で、ワインと料理の組み合わせが正しいか間違っているかを判断できるところまできた。「料理に合うワインを選ぶことはお客様やソムリエができるけれど、ワインに合う料理を作れるのは唯一シェフだけ」この言葉を胸に刻み、日本に帰ってからもこの経験を生かしたいと思う。

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