Italian Culinary Institute for Foreigners
ICIF 外国人のためのイタリア料理研修機関
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コスティリオーレ便り
2006.9.19
トリュフたっぷりのリゾット。
コスティリオーレを散策。
 今日はイタリアにおける米の販売量No.1「RISO GALLO」の工場見学に行った。工場内は写真撮影禁止ということで残念ながら写真はない。工場見学なんて○十年前の社会科見学以来だ。
 工場に入る前に商品説明を受け、皆で記念写真をパシャリ。その後米の厳選から精米、パッキングの一通りを見せてもらった。お米は契約農家から購入し、毎回サンプルチェックを行い、品質を一定に保っている。もみ、ぬか、未成育米、割れ米、黒い米などは全て取り除き、綺麗なお米のみ出荷される。たしかにRISO GALLOの商品でブサイク米を見たことないな、と感心。もみは園芸肥料に、その他は動物の飼料にしているので無駄がない。他にイタリア米がなぜリゾットに最適なのかなど実に興味深い説明を受け、イタリア米に対する興味を深めた。しかしRISO GALLOの商品は2年前に日本の某商社と取引が破談になったため、日本で購入できないらしく、非常に残念だ。
  RISO GALLOより昼食の招待を受け、工場近くのリストランテでお食事。もちろんプリモはリゾット。イタリアに来て初のトリュフのリゾットを食べた!! うーん、いい香り! 一緒にランチをした工場のお兄さん、せっかくのトリュフ残してる!!「きのこ好きじゃない」なんて贅沢な!!(怒)
 コスティリオーレに戻り、夕食まで時間があったので町を散歩。毎日美味しいもの食べてばかりなのでたまには歩かないと。ここに来てからどんなに北イタリア特有のバターやチーズたっぷりの食事をしても不思議と胃にもたれない。日本の友人に醤油が恋しくなるだろうから持参するように勧められたが、食べたいと思わない。むしろ限られた食事の中でできるだけ多くのイタリア料理に出会いたい、感動したいと思う毎日。そして日本に帰ったら伝えたい、イタリア料理の優しい味を大切な家族や友達に、そして愛する人に。

2006.9.21
授業の最後に記念撮影。前から1列目、真ん中にいるのがシェフ、ボッタ・ダビデ氏。
韓国チームも日本チームも入り混じって授業は進められる。
 スプマンテで有名なフランチャコルダに程近いところにある“トラットリア・アルトグリ”のシェフ、ボッタ・ダビデ氏を招いての特別教習。韓国チームとの初の合同授業で、野沢氏と韓国のソン・ミーさんによる二ヶ国語同時通訳で進められる。とにかく韓国語が新鮮! 国際色豊かなイチフならではの授業だと感じた。
 さて本日行われた4品のデモンストレーションは、すべて彼のレストランで実際にメニューに載っているものばかり。アンテプリマからドルチェまで、どれも目からウロコが落ちるような料理ばかりだったが、その中でも生徒に一番人気があったのは、“Risotto alla Grana Padano con verdure e stinco di maiale glassato”。グラーナ・パダーノチーズのリゾットに豚のすね肉の煮込みを合わせたボリュームとコクのある一皿。基本をきっちりと抑えながら、彼独自のセオリーを散りばめたリゾットの作り方に感動。また4品を同時進行でテキパキとタイミングよく仕上げる姿、細やかな配慮や料理中のキリリとした姿勢などに、プロのシェフの“真の姿”を見たという意見多数。9時から12時半までという長丁場だったが、時間があっという間に過ぎていった。寮に帰ってからも、ワインを飲みながらこの講習の話で皆が盛り上がる。

2006.9.28
終日私たちに詳しい説明をしてくれたコーヒー博士のルカ氏。
ルカ氏がデモンストレーションをした素敵なカプチーノ。東京だったら1杯1200円!?
 イタリアにてコーヒーのシェア47.5%を誇る、LAVAZZAの工場にてコーヒーの講習を受ける。9時30分、トリノ近郊にある工場に到着し、まずトレーニングセンターに通される。ここには10種類以上の最新機能を搭載したエスプレッソマシーンが備え付けられてあり、ルカ氏が自ら全員のカフェを入れてくれた。
 コーヒーを飲み終わり、午前中はコーヒーについての基礎を学ぶ。コーヒー豆の種類、焙煎の方法、正しく美味しいコーヒーの入れ方など。講師であるLUCA氏はまるで“歩くコーヒー辞典”さながら。私たちからの質問にも、すべて完璧に答えていく。
 小一時間、工場を見学した後、社員食堂にて工場で働いている方に混じってランチ。セルフサービスの社員食堂にもかかわらず、アンティパスト、プリモ、セコンド、ドルチェまでコースが用意されている。しかもすべて2〜3種類の中からチョイス可能! 日本と大きく異なる、ここイタリアのランチ事情を目の当たりにし、彼らイタリア人がいかに食にこだわっているのかを改めて知る。
 午後は日本人にもっとも好まれているカプチーノの入れ方の実践。ルカ氏は簡単にミルクを泡立て、カプチーノの表面に芸術的な模様を手早く描いていく。私たちもマシーンと格闘し、何度もトライしてみるが“見るは易し、行うは難し”。とにかく練習あるのみ----そんなことを実感して一路、帰路についた。
 さて余談。この日、寮に戻ると、なんと高速インターネットの設備が食堂に出現! 突然のことで一同、びっくり。高速ケーブルをつなげば食堂で、無線ランの設定がされていれば寮内どこでもインターネットが無料で可能。この1ヶ月、まったくメールやネットが見られなかった状況だったので、この大きな変化はとても嬉しい。

2006.9.29
大きなピッツァ用のヘラ(?)をいとも簡単に使うダビデ先生。
皆で並んでピッツァの成型。その眼差しは真剣そのもの。
 ダビデ先生によるピッツァとフォッカチャの授業が午後よりはじまる。大型の機械を使い簡単に、そして手早く生地が完成していく。生地を触れば、それが生き物であるということを実感する。まるで赤ちゃんの肌のようにしっとりしていて柔らか。
 生地の発酵までは先生が手がけ、そこからは一人一つのピザを作り上げることに。最難関はピッツァの成型。先生と同じような動きをしたつもりなのに、同じような綺麗な丸型にならない・・・。楕円形になってしまった人、お手本よりも一回りも小さな丸型になってしまった人などが続出。19名全員が自分で作ったピッツァ台にそれぞれのトッピングをし、高温のオーブンに入れて5分。アツアツのピッツァ・マルゲリータの完成。出来上がった人から試食をする。生地はパリッ、チーズはトロリ。このコントランストがなんとも言えずに美味しい。このピッツァの香りをかぎつけて、スタッフの方も試食をしにパティスッチェリアに顔を出す。午後4時からちょっとしたピッツァパーティになった。

2006.10.3
何時間見ていても飽きない車窓からの眺め。連なる丘の斜面には、ブドウ畑が続いている。
これが試飲させていただいたバルバレスコ。こっくりというより、繊細な印象の強いワイン、との評価多数。
バリック樽の中でワインに熟成をかける。樽の下には砂利が敷かれ自然に湿度調整をしてくれる。
 ここコスティリオーレダスティから約30キロの距離に、世界的に有名なバルバレスコとバローロがある。今日の午後は、ワインの授業の最後の締めくくりとして、野沢さん、ジャンニさんと一緒にバルバレスコのシャトーを訪れた。
 午後14時に寮を出発し、バスに乗って約30分。なだらかに続く丘の斜面すべてにブドウが植えられている美しい景色を眺めながら、バルバレスコの町にたどりつく。ここは、12ヘクタールものブドウ畑を抱える巨大シャトー。通常、バルバレスコにあるシャトーの畑は約1ヘクタールということから、ここがいかに特筆すべき場所かということがわかる。
 カンティーナにたどりつくと、その前には収穫したばかりのブドウが箱にギッシリと詰まっている。今日が今年のブドウ摘み、最終日だったとか。ブドウ一粒を味見すれば、こっくりと甘く、深みのある味が口の中いっぱいに広がる。2006年は良年だったとあちこちで耳にするが、これが世界中のマニアが待ち望むワインになるかと思うと、とてもワクワクする。
 エノロジアの方にワイン作りの工程に沿って、ステンレスの発酵タンクや、バリック樽が置かれている場所などを案内していただく。どこもここも独特のワイン臭が立ち込め、ひんやりとした空気に包まれている。そして見学の後には3種類のワインのテイスティング。やはり私たちの一番の注目は、バルバレスコ。ワインの女王といわれるだけあって香り豊かで、味も濃厚。一同ぐっと口数が少なくなるのが面白い。ワインの評価に全神経を集中させ、どんな料理に合うのか(アッビナメント)を考え出す。ジャンニさんと野沢さんの的を得た意見に耳を傾け、頭の中で“例のグラフ”を描き出す。これも2週間にも及ぶエノロジアの授業の賜物。日本に帰ってからもイタリアワインを飲むたびに、こうやってワインの評価とアッビナメントを考え続けていきたい。

2006.10.7
韓国&日本チームで記念撮影。チームワークは抜群でした。
このブドウの垣根の間を移動しながら、摘んでいく。合計で何列、収穫したことか。
 ICIFでの土日の過ごし方は生徒によってまちまち。金曜の夜から夜行列車に乗ってヴェネツィアに旅立つ人、近場トリノやアスティに足を運ぶ人、星付きレストランを巡る人、ここコスティリオーレで過ごす人などなど。今日の私は先週の疲れを癒す目的で、寮でのんびりと過ごす予定だった。が、その予定は朝10時半に大きな変更をすることになった。
 まだベッドから抜け出せない私の携帯に、野沢さんより電話が一本。「ブドウ摘みに興味ありませんか?」 もちろん「はい、興味あります!」と即答。なんでも、今日、事務スタッフ、エリーザさんの家で今年最後のブドウ摘みが行われ、それにお誘いを受けたとのこと。イタリアの秋の一大イベント、ブドウ摘みに参加できるチャンスなど二度と来ないかもしれない、そんな気持ちで勢いよく行くことを決めた。
 午後2時に寮に残っていた日本人3名と韓国人2名の計5名でエリーザさんのおじいさんの畑に向かう。そこでは家族総出でブドウ摘みをしており、私たちも、一人ひとつずつのはさみと手袋を渡される。そして「はい、日本人はこの一列。よろしくね〜」と簡単に言われ、100mほどもある1列をそっくりそのまま任されることになってしまった。
 いざ畑に入れば私の苦手な虫(蜘蛛、むかで、小さいハエなどの類)が山ほどいて、足元はドロドロ。ブドウの糖分で手はベトベトになるし、斜面で腰をかがめての作業は思ったよりも辛い。ブドウ畑は外から見ているだけのほうが格段にロマンティックであることをスグに知る。とはいえ私たちはこの日の貴重な労働力であり、仕事を任されたからには途中で投げ出すわけにはいかない。もくもくと口もきかずに日韓合同で、4時間、ブドウを摘みに摘みに摘み続ける。そのスピードたるやイタリア人の2〜3倍。真面目で勤勉なアジア人気質を「これでもか!」と見せつけんばかり。これにはエリーザさんの家族もビックリしたそう(後日談)。
 あたり一面のブドウ畑は黄昏時を迎える頃までには、この日のノルマを全て摘み終えることができた。肉体労働ならではの疲労を感じたが、なぜか気持ちはスッキリ。ブドウ摘みの辛さはもうすっかり忘れてしまい、毎年、ブドウ摘みの頃にイタリアに来るのも悪くはないな、と思ってしまった。

2006.10.9
運び込まれた仔ヤギ。ちょっとグロテスクだけれど、こんなことで怯んではいられない。
写真撮影をしたり、じっくり観察する人も。
軽々と持ち上げ、生徒にプロセスを説明するダビデ先生。
 今日からフロッサースコにある分校での授業が始まる。朝7時にコスティリオーレをバスで出発して、9時に到着。9時半から授業(しかも実習)開始というハードスケジュールだ。フロッサースコはトリノの北40kmのところにある小さな町。学校はまだ出来て間もないようで、どの教室も新しく、コスティリオーレにはない新設備も備えている。ちょうど韓国人、ブラジル人などでコスティリオーレの施設が混雑していたところだったので、5日間、この施設をまるまる私たちだけで使えるのはとても嬉しい。
 午後はいよいよ、セコンド・ピアットの授業、カルネに突入。授業が始まるのを待ち教室で座っていると、なにやらとても大きな物体が運び込まれてくる。ダビデ先生が袋を開けてみると、そこにはなんと今日のレシピ「Capretto Allo Spiedo」の材料である仔ヤギが丸ごと入っている。その生々しい姿に驚き、はじめは遠巻きに眺めていたが、これも貴重な体験のひとつと理解し写真撮影をすることに。その後、先生はこの仔ヤギに軽く説明を加え、テキパキとヤギに背脂を巻き、たこ糸で縛ってオーブンに突っ込む。
 このダイナミックな料理は、その晩のディナーで食べることになった。野沢さんがおっしゃるに、レバーが美味しいとのことだが、皆、それぞれ積極的に興味ある部位を味見してみる。私はレバーの他にも脳みそにトライしたが、個人的には脳みそのほうが印象的な味だった。まろやかな口当たりだが、味はサッパリ。見た目はまるで白子のようなので私たち、日本人には馴染みがあって食べやすい気がする。それにしても、この料理は大胆かつ素朴。そもそも北イタリアの農民たちの料理のひとつだそうだが、日本では絶対に味わえない地元の味だと感じた。

2006.10.11
ある日のランチメニュー。ズッキーニのスープに小イカとポルチーニがアクセント。
この日のサービスはグルッポBが担当。リゾットと鶉のローストを取り分ける。
フロッサースコでは本当にお世話になったパオラさん。皆に優しい人気者。
コスティリオーレ城で働くファビオさん。リグーリア州出身の22歳。
 ICIFでの2ヶ月間、本当に感謝したのが「日々の食事」。皆、舌が肥えに肥えたプロのシェフゆえ、食事へのこだわりはそれなりのもの。2ヶ月間、そんな私たちを唸らせるランチとディナーを作ってくれたのは、パオラさんとファッビオさんの二人。
 昼12:15と夕方18:00になると、この2人に担当の班の生徒(4〜5人)が加わり食事の仕上げを行っていく。中でも毎日の昼のメニューはデコレーションもとても凝っており、いつも私たちを楽しませてくれた。
 午後は実習での試食が続くということもあって、ディナーは比較的軽め。それでも私たち19名はいつもお腹ペコペコで、特別にお願いして“3キロ”のパスタを茹でてもらっていたほど。お城での研修中、2〜3キロの体重増は当たり前。中には5キロ、7キロ太ってしまった者も出るほどだった。
 一方、フッロッサースコでの1週間は、パオラさんが付きっ切りで私たちのお世話をしてくれた。この期間中、彼女は一人で実習の食材を揃えたり、設備の点検などをしなくてはならず、とても大忙し。私たちも班ごとに手伝いに入って、パオラさんをサポートする。ひと班は主に料理の仕上げを担当し、もうひと班はサービスを担当するというシステムで手際よく食事の準備をする。研修が始まったばかりの8月には盛り付け方などもぎこちなかったが、最後のほうには個々人の好き嫌い、また食べられる量まで完璧に把握。「××くんは大盛り希望だよね?」とか、「○○さんは、チーズはいらないね?」とか、そんなコミュニュケーションが簡単に取れるようになった。まるで自分が飯場のオバチャンになったかのような気がして、少し笑えてしまう。

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